【プレスリリース】ウェルネスツーリズムに関する独自調査結果を公開

富裕層の8割が「ウェルネス」を重視して日本への旅行を計画~現状のサービスへの不満解消がインバウンド需要獲得の鍵~

アンケート実施の背景・目的

昨今、アジア市場ではウェルネス産業が急成長を遂げており、多くの人々が健康や心身のリフレッシュを求めるようになっています。このトレンドは日本市場においても例外ではなく、ウェルネスに対する関心が急速に高まっています。しかし、日本市場の具体的なニーズや抱えている課題については、まだ十分に理解されていないのが現状です。今回のアンケートは日本の観光業界がウェルネスに関するトレンドへの理解を深め、今後の事業戦略の検討に役立てることを目的として実施いたしました。

アンケート実施概要

【旅行者におけるウェルネスに対するニーズ調査】
・期間:2024年5月22日~6月12日
・アンケート方法:自社によるインターネット調査
・対象者:日本旅行を経験もしくは検討している外国人190名(25~70歳の富裕層)
・エリア:アメリカ、中国、インドネシア

【宿泊業界におけるウェルネスに対する意識と取り組み状況の調査】
・期間:2024年5月23日~6月10日
・アンケート方法:自社によるアンケート調査
・対象者:当社宿泊業界クライアント19社
・エリア:アメリカ、シンガポール、ドバイ、欧州等

注目すべきアンケート結果

①富裕層の8割が「ウェルネス」を重視して日本への旅行を計画
 ・回答者の半数以上が日本旅行におけるウェルネス体験の予算を15万円以上に設定
 ・温泉や和食だけでなく、禅、森林浴、金継ぎにも注目が集まる

②日本旅行の経験者の7割が「ウェルネス」に関するコンテンツやサービスの不足を実感
 ・首都圏だけでく地方へのインバウンドが増える中、受け入れ体制に課題
 ・日本ではウェルネス要素が文化として根付いているため、
  日本人が「日本ならではのウェルネス体験」の世界的価値を認識することが難しい 

③先行するアジアの観光業界では、事業成長に向けて「ウェルネス」への投資が活発に
 ・5つ星リゾートホテルをはじめとするウェルネス先進国の宿泊施設の経営層が
  客室平均単価(ADR)を向上させる上で最も効果的だと考えている投資先は「スパ施設」

①富裕層の8割が「ウェルネス」を重視して日本への旅行を計画

今回の調査結果から、外国人旅行者が日本でのウェルネス体験に対して非常に高い期待を寄せていることが明らかになりました。現在、世界的に「Jウェルネス」(JはJapan)がトレンドとなっており、日本は世界一の温泉大国であり、和食文化や長寿健康大国としても注目されています。また、近年では、単なる身体の健康だけでなく、禅、森林浴、金継ぎといった、心身の両面から健康を目指すウェルネスの観点からも日本が関心を集めています。そのため、「日本に訪れたら健康になれる」という期待感を抱く旅行者が非常に多く、今回の調査結果にもその傾向が鮮明に表れています。

さらに、日本旅行にかけるウェルネス関連の予算も、半数以上の回答者が15万円以上を設定しており、旅行者がかなりの金額をウェルネス活動に投資していることがわかりました。

②日本旅行の経験者の7割が他国と比べて「ウェルネス」に関する施設やコンテンツの不足を実感

調査結果によると、日本旅行の経験者の7割以上が、他の地域に比べて日本のウェルネスに関連するコンテンツやサービスが不足していると感じています。その理由は大きく2つ考えられます。

1つ目は言語と地域的な障壁です。
ウェルネス施設やサービスの情報が主に日本語で提供されており、英語や他の言語でのサポートは不十分です。これにより、非日本語話者の旅行者がサービスを十分に理解し、日本で満足のいくウェルネス体験を享受することが難しい状況です。主要な観光地ではインバウンドの受け入れ体制が整っているものの、地方ではその体制が十分ではなく、地理的な隔たりも影響を及ぼしています。

2つ目の理由は専門家の不足です。温泉やバランスのとれた日本食など、日本固有のウェルネス要素が文化として根付いているため、日本人には世界で評価されている「日本ならではのウェルネス体験」の価値を適切に認識することが難しいと考えています。ウェルネスに関する専門的知識を従業員向けに教育することや、外部の専門家の知見を取り入れることで、今後の日本のウェルネス市場において、グローバルなニーズを満たす付加価値提供に繋がると考えています。

③先行するアジアの観光業界では、事業成長に向けて「ウェルネス」への投資が活発に

当社はこれまで東南アジアを中心に5つ星ホテルをはじめとしたのウェルネス事業の支援をしてまいりました。今回はその中のクライアント19社へのアンケートを実施いたしました。
今回のアンケート結果より、多くのホテルがウェルネス施設やプログラムへの投資に対して前向きであることが分かります。特に、約84.2%の回答者が投資に対して肯定的な姿勢を示しており、これは日本市場におけるウェルネスの重要性を示唆しています。海外でここまで投資意欲が高い理由は、経営層がウェルネスへのニーズを重要視しており、顧客満足度の向上、客室平均単価(ADR)向上といったリターンや効果が十分に期待できると考えているからです。また、「どのようなウェルネス施設やアクティビティが客室平均単価(ADR)を向上させる上で効果的と考えるか」という問いに対し、最も期待をされているのはスパ施設ということがわかりました。マインドフルネスや栄養重視の食事プログラムといった個別の体験も効果が高いとされていますが、それらを組み合わせた総合的な健康増進の提供の方が、特に高い効果が期待されています。これらの結果から、ウェルネス施設やサービスの提供者は、多様なニーズに対応するために、様々な種類のウェルネスアクティビティを提供することが推奨されます。

日本ではまだ少ない、地域特性や歴史・文化と、宿泊施設の特長やコンセプトとを融合させたユニークなウェルネス体験を提供することは、外国人旅行者の満足度向上、リピート率向上に貢献できると考えられます。

アンケート・調査結果の総評

調査結果によると、富裕層の旅行者の8割が「ウェルネス」を重視して日本への旅行を計画しており、日本に対する期待が非常に高いことが示されました。特に温泉や和食、禅や森林浴といった日本独自のウェルネス要素が注目されており、日本が持つ健康文化の強みが強調されています。このトレンドは「Jウェルネス」として国際的に認知されつつあり、日本がウェルネス大国としての地位を確立するポテンシャルを持っていることが示されています。

しかし一方で、日本旅行の経験者の7割がウェルネス関連のコンテンツやサービスの不足を感じているという指摘もありました。特に、言語の壁や地方での受け入れ体制の不備、そして日本人が日本のウェルネス要素の価値を国際的な視点から十分に認識していない点が課題として浮き彫りになっています。これにより、ウェルネスツーリズムの分野での日本の競争力を向上させるためには、外国人旅行者のニーズに対応した施設やサービスの整備が必要であることが示唆されています。

さらに、他のアジア諸国では、ウェルネス分野への積極的な投資が進んでいることも報告されています。特に、ホテル業界ではスパ施設やマインドフルネスプログラムへの投資が顧客満足度や客室単価の向上に寄与するとされ、日本もこうした流れに対応する必要があります。

総じて、日本が持つウェルネスの潜在力を最大限に引き出すためには、外国人旅行者のニーズを的確に把握し、ウェルネス体験の質を高めるための施策が求められます。また、地域特性や文化を活かしたユニークなウェルネスプログラムの提供は、旅行者の満足度やリピート率の向上に繋がる重要な要素となるでしょう。この調査結果は、日本がウェルネスツーリズム市場での地位を確立するための重要な指針を示しています。